1本のネックレスが出来るまで

「月のしずく」と呼ばれ人々を魅了し続けてきた真珠。
その神秘的な輝きには、職人達による絶え間ない努力の結晶が詰まっています。

真珠養殖

稚貝育成

真珠養殖の第一歩は、母貝へと成長していく稚貝を育成することから始まります。
稚貝は一定の大きさになるまで大型水槽で育成します。

母貝育成

貝がある程度成長すると、育成用のネットへ入れられます。
そして、自然界の植物プランクトンを摂取させるために水槽から海へ移動させます。
その間、母貝の成長を妨げるカキやブジツボなどの付着物を取り除く貝掃除を定期的に行います。

挿核準備

挿核手術時のショックを和らげるため、母貝をネットから抑制カゴに移し、静かな状態で育成し貝の成長を弱めます。
他にも真珠の品質に影響を及ぼす悪い要因を抑える工程として、卵の発育を抑える卵止めや、排卵を促進させる卵抜きを行っています。

挿核手術

真珠の素になる核入れは、真珠養殖で最も重要な工程です。
仕立てを終えた貝に、ピース(外套膜から切り出された細胞)と核(真珠層と構造を一にするアメリカ・ミシシッピー川産の淡水二枚貝の貝殻から削りだした円形のもの)を挿入します。

挿核時に貝の内臓などを傷つけてしまうと、せっかく育てた貝が衰弱して死んでしまったり、うまく真珠にならないこともあります。
この工程は最も繊細な技術と最新の注意が必要で、一人前になるには長い年月と経験を必要とします。

養生・真珠育成

挿核手術の傷が癒えるまで養生させた後、エサの多くある沖に出され本格的に真珠の育成に集中させます。
その間、水温管理や塩分濃度などの海中の環境管理だけでなく、付着物の掃除も欠かせません。

採珠:浜揚げ

ここでようやく貝を海から揚げ、真珠を取り出す工程へと入っていきます。
ですが、これまでの工程を確実にクリアしてきたとしても、浜揚げの段階までに死んでしまう貝もあります。
さらに、うまく真珠になっていたとしても基準を満たす美しい真珠に仕上がっているものは、ほんの一握りと非常に厳しい世界なのです。

この浜揚げは、海水温の低下によって真珠層の形成がきめ細かくなり、真珠のもつ独特の光沢「テリ」が出てくるため、初冬に行われるのが一般的です。
この採取の時期を決めるのも、技術の一つといえます。

用途別選別

真珠をその真珠が持っている特性の違いによって、リング、イヤリングなどで使用するルース用やネックレス用などの用途別に選別する工程です。

用途別選別までの流れ

浜揚げ後の仕入れられた真珠は、各産地ごとに同質のもので集め、洗浄処理を行い、0.5ミリ単位までサイズ分けされます。
サイズ分けされた真珠は、さらに形、キズ、巻き(真珠層の厚さ)、色、テリ(光沢)の各要素によって用途別に選別された後で、様々な選別工程でさらに細分化されます。

選別のポイント

真珠は、見る場所や時間帯によって見え方が微妙に変化します。
真珠の繊細な輝きを見極めるには、北向きの柔らかい日差しが必要不可欠。しかも、太陽光の光量に左右されず、常に同品質を守ることも求められます。
真珠選別の基礎を学ぶには最低三年はかかると言われます。また、真珠選別は、何十年というキャリアを積んでも極めることのできない奥の深い世界です。
大月真珠では業界で最も細かいと言われる独自の品質基準に基づいて厳格に行われています。

穴明け

用途別選別を終えた真珠はこの穴明け工程に全て集められ、ここでひとつひとつ珠を見て、その用途に合った穴が明けられます。
形、キズ、色を見て、その真珠の良さを一番活かせる場所を一瞬で見極め、素早く穴を明けていきます。
その真珠が持っている本来の良さを引き出し、最も商品価値の高い宝石にできるかどうかが穴明けにかかっています。

品質別選別

用途別選別の工程でネックレス用に選別された真珠は、品質別選別工程で特に形とキズに特化して、さらに細かく選別されます。

選別のポイント

浜揚げ後の仕入れられた真珠は、各産地ごとに同質のもので集め、洗浄処理を行い、0.5ミリ単位までサイズ分けされます。
サイズ分けされた真珠は、さらに形、キズ、巻き(真珠層の厚さ)、色、テリ(光沢)の各要素によって用途別に選別された後で、様々な選別工程でさらに細分化されます。

連組み

「連」とはネックレスのことを指し、連組み工程とは、これまで選別を繰り返して品質を合わせた真珠を一本のネックレスに組む(仕上げる)、いわばネックレス作りの最終工程です。

連組み工程

真珠をネックレスにする場合、形や色、テリ、巻きなど真珠のすべての品質を均一にすることで、より美しく価値のあるネックレスに仕上がります。
連組み工程ではまず、前工程で選別された真珠をさらに細かく、色、テリ、巻きの品質別に選別していきます。
竹製のピンセットで真珠をひと粒ずつ並べ、真珠の顔を見ながら並び順を変え、ネックレスの顔「連相」を合わせていく。「連相」とは、ネックレス全体の均一感を表す言葉で、ネックレスの均一感が整っているネックレスの方がより美しさを感じることができます。
前工程での選別も含め、一本のネックレスを作るために数十回もの選別を繰り返していることになりますが、そうやって何度も何度も選別を重ね、品質を合わせた真珠も、並べ方によって全く違うネックレスになるといいます。

職人技のネックレス

連組みした真珠に糸を通し、クラスプと呼ばれる留め金具をつければネックレスの完成である。それらの作業もすべて人の手によって行われています。
ネックレスを作る工程には、すべて人の手が介在しており、そのすべてが匠たちの職人技によって支えられています。

片穴選別

真珠をその真珠が持っている特性の違いによって、リング、イヤリングなどで使用するルース用やネックレス用などの用途別に選別する工程です。

リングやイヤリング・ピアス用の真珠には、金具を差し込むための、片側のある面にだけ穴を明けた、いわゆる片穴が明けられます。それらの用途向けの真珠を選別するのが、片穴選別工程です。

片穴選別工程でも他工程と同様、色、テリ、巻き、形によって真珠をさらに細かく選別します。
この工程ならではの作業は「ペア組み」と呼ばれる、イヤリング用に似通った二つの珠をペアにする選別です。
色、形などのすべての要素が一致するものでないと、ペアになった時に不自然さが生まれてしまいます。ひとつとして同じものがない真珠をペアにする作業は、まさに職人技です。

南洋真珠のネックレス

日本で生まれるのがアコヤ真珠ですが、海外で生まれる真珠もあります。それは、主に南半球で採れ、総じて南洋真珠と呼ばれる、白蝶真珠と黒蝶真珠です。

大月真珠では、南洋真珠を仕入れてから製品になるまでの全ての工程(用途別選別、品質別選別、連組み)を、ひとつのチームで行っています。
そこには、南洋真珠ならではの理由があります。
南洋真珠はアコヤ真珠と比べ、南洋真珠は世界的に見ても生産量が限られていることに加えて、加えカラーバリエーションが多く、形も多彩であるため、少人数制をとって、仕入れ状況や在庫量などの情報を全員で共有し、加工に対する全員の認識を合わせています。

真珠のネックレスは、形や色、テリ(光沢)などの品質が合っているものが、価値が高いのですが、南洋真珠の場合、“絶対量が少なく、種類が豊富”なために、一本のネックレスの中で品質を合わせるのが難しくなってきます。

そのため、ネックレスに合わない真珠は金庫に保管し、次回以降の仕入れで合う真珠が現れるのを待ったり、ブローチやイヤリングといった別の用途に選別したり。その真珠が持っている良さを活かす道を探していきます。